因幡修次という名の妖怪の音楽~Music of the monster named Shuji Inaba~

2016/03/11

『見えんけどおる』




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作詞:因幡修次 作曲:因幡修次

心優しき 人ならば
両手を合わせて 瞳をとじて
命の逝方を 見送ることで
尊きあなたを 永遠に祈ろう

花の命は 儚いけれど
命をはからう ことすらせずに
美しく 咲いたことだけを
誇らしく 悟りゆく

心優しき 人ならば
両手を合わせて 瞳をとじて
幼きわたしを 見守ることで
見えないあなたを ここに感じる

真実は 残酷だ
現実は ウソつきだ
美しく 散ったことだけを
潔く 歌い継ぐ

心優しき 人ならば
両手を合わせて 瞳をとじて
命の逝方を 見送ることで
尊きあなたを 永遠に祈ろう
尊きあなたを 永遠に祈ろう



2011年3月11日。金曜日。

確か5年前のあの日も、金曜日だったと思う。

遅いお昼ごはんの後、コーヒーを呑みながら見ていたテレビから、聞きなれない警報音。
関西住みの私は、阪神・淡路の震災の記憶がよみがえり、
パニックになりそうになりながらも、家の中に火の気のあるところがないか思い浮かべながら
とにかく家族が外に出れるよう窓を開けた。

古い家がガタガタと音をたて、少し大きいそして緩やかな揺れが今までになく長く続いた。

一度消したテレビをつけると、流れる情報と映像から目を離せなくなり、
そしてそれは、目を背けたくなる情報と映像が長く長く続く前触れだった。

3月とはいえ東北の地。まだまだ冬の寒さのつらい中、
信じられない被害の大きさに混乱する情報。
地震だけじゃない、津波という信じたくない被害の大きさ。
原発という信じられない新たな脅威。

所在がわからない方々を数える数字のそのほとんどが、
まさか、亡くなられた方々の数になるとは誰も最初は思わなかっただろうし、
助かられた方々の避難所生活が、そして仮設住居にうつられてからの生活が
これだけ長くつづくとは思わなかっただろう。

離れた地からは何もできないもどかしさ。
想像するだけでもつらい、現地の被災者の方々の現状。

届かぬメールや電話に押しつぶされそうになりながら、
つながったネット越しに安否を確認できた友。

心だけはそばにいるから。ずっと思ってるから。祈っているから。

言葉にはしにくい思いを、どうか伝わるようにと願いながら、
集まったチャットルームで、空元気を出して、歌い、笑い、ふざけ合い。
明日への心と体の活力を充電して、その地その地で一日一日を生きる。


そんな忘れられない日々から丸5年がたった今日。


なかなか進まない復興や、恐怖と矛盾に満ちた原発への、不満や怒りをは忘れて、
この日だけは、心静かに、あの日のことを思う一日でいたい。
被災された方々を、復旧に頑張ってくださってる方々を想い祈る一日でいたい。
亡くなられた方々の笑顔を偲ぶ一日でいたい。


『見えんけどおる』


東北大震災の一年前に産まれたこのお歌は、
某国営放送の朝のドラマで使われた言葉を題名にしている。

いつの間にかこのお歌は、亡くなられた方々を偲ぶ歌想う歌として、折々に歌われるようになった。


被災地で頑張っておられる方々。
帰れる日を待って避難先で頑張っておられる方々。
新天地で新しい生活を切り開いておられる方々。
被災地に行って復興に尽力しておられる方々。
そして、震災だけじゃない、いろんなつらい思いや重荷を背負って、毎日頑張っている方々。

生きている限り、誰にでも、あの世に見送った大切な人、親しかった人がいると思う。

つらい時、泣きたい時、悲しい時、一人だと感じる時。

どうか、その方のことを思い出してほしい。
思い出したお顔は、悲しそうなお顔、つらそうななお顔じゃないですか?

あなたがその方を大切に思っている想いが決してなくならないように、
その方があなたを思っていた想いも、決してなくなるはずもない。
魂になっても、あなたのことを、ずっと見守って、そばにいてくれている、

今、あなたは、私は、生きています。

見えない方の、そばにいる方の、遠く離れた地で思ってくれている方の
目には見えないけれど、想いが祈りがパワーがきっと、
あなたを、私を、支えて生かせてくれている。

だから、あなたは、決して一人じゃないんだと、
あなたの命は、あなただけのものじゃないんだと、
あなたの一歩が、あなたを支えるすべての方を、笑顔にしてくれるのだと
あなたの笑顔が、眠っておられる方への何よりのご供養、贈り物になるのだと
ちょっとだけでも、心に留めておいてください。


"震災後”という言葉を使うには、まだまだ程遠い現状。
おつらい日々、頑張ってくださってる日々のゴールには、もう少しかかるかもしれない。
でも、着実に、一歩づつ、前に進んでいるはず。
新しい問題が起きても、それをまた乗り越えていく、それだけの日本であるはず。
思いを願いを祈りを、日本中が新たに被災地と頑張ってる方々に捧げている今日という日。


どうか、思い浮かべた大切な方のお顔が、笑顔でありますように。
”ほら見てみろ~俺のあなただから、大丈夫だよな~”って
”あなたの笑顔が、一歩が、私はうれしいよ~”って
言ってくれてるような、そんな笑顔でありますように。

その方が、安心してうつらうつらしながら、そばにいられるような
そんな毎日が早く来ますように。
あなたがずっと笑顔でいられる毎日が、早く来ますように。