因幡修次という名の妖怪の音楽~Music of the monster named Shuji Inaba~

2016/03/15

『黒い一日』


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作詞:因幡修次&妖怪の宴 作曲:因幡修次


あなたの中の夜が 私を落とすよ
残酷が痛いよ 残酷が痛いよ

あなたの中の夜が 私を嘲笑(わら)うよ
ありのままのあなたが ありのままのあなたで

あなたの中の涙が 私を濡らすよ
真実が辛いよ 真実が辛いよ

あなたの中の涙が 私をとめたよ
そのままのあなたを そのままのあなたで

残酷が痛いよ
ありのままのあなたで
真実が辛いよ
そのままのあなたで


わたしの中の女が あなたを裏切るよ
嫉妬が刺さるよ 嫉妬が刺さるよ

あなたの中の男も 私を熔かせない
燃えるカケラは何もない 凍てついて何もない

あなたの中のあなたが 私を犯すよ
暗闇が怖いよ 暗闇が怖いよ

私の中の私が 私を壊した
虚像にひとり 暗闇にひとり

真実が刺さるよ
凍てついて何もない
暗闇が怖いよ
暗闇にひとり

姑息な逃避だ
曖昧な封印だ
残酷な直視だ

怖いのは私



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ある里に、歌を歌う妖怪がおりました。

毎夜のように、時々昼にも、歌いたい発作が起きれば朝にも、
6本の弦の楽器を奏でながら、たまに叩きながら、そして呑み倒しながら、
心の歌を歌い、叫び、心から笑い、怒り、泣く、そんな妖怪の住む里には、
たくさんの人が、歌を聞きに集うようになりました。

その妖怪は、歌から出る妖気が、人から邪気を払い傷を癒し元気づけるという
特技をもっておりました。

いえ、特技とはいえないかもしれません。
その妖気の源は、自分の、友の、思いを、祈りを、怒りを、悲しさを、
目一杯込めたお歌を作る時に出る、生みの苦しみから出る涙と、
弦ですり減った爪からは煙が出てたという噂の立つほどの、
日々の影での練習から出る汗でしたから。

たまに、エxいことを言ってまわりを困らせたり、椅子から浮こうとしたり
妖気が効きすぎて、楽器を手に妖怪化してしまう人が続出してしまうなどという
問題も多々ありましたが、その妖怪柄もあって、
たくさんの人から愛される歌を、歌い続けておりました。


ある朝のこと、妖怪の足元に、突然大きな穴があき、妖怪はそこに落っこちました。

それは、時々ひとり、ジャンプしたりストレッチをしたりして、
密かに体と心をほぐしていた妖怪の長年の振動と勢いで、
地面が割れてあいてしまった穴でした。

びっくりした妖怪の髪の毛は、さかだち、くねり、
いつもその妖怪のいる里の上でお歌を聞いていた黒い月にからみつき、
月は、妖怪と一緒にその穴に堕ちてしまったのです。

まったくの偶然でした。

穴は、深くて静かで冷たくて、真っ暗なところでした。
真っ暗なのに、見えなくていい真実が、一杯見えました。
妖怪も月も、落ちた痛みとその怖さで、ボロボロになりました。


それでも、妖怪は自分がつらい中、胸を張って歌を歌い
月をいたわり励ましました。
月もそれにこたえようと、空元気を出して微笑みました。

妖怪は、細い背中に月を背負い、月の重みでギックリ腰になりながら、
穴から這い上がってくれました。
地上に出たあとも、妖怪は自分のせいだと、月に何度も謝ってくれました。

そして、何事もなかったように、妖怪は歌を歌い続けました。
いつも妖怪と妖怪の歌と妖気を待ち望んでる、妖怪を支えてくれている方々のために
そして歌と妖気は、ご自分の痛みもちょっとづつ癒していきました。


月日が過ぎ、妖怪は、その時のことを忘れないようにと、
その時の思いを歌にすることを思いつき、できあがりかけているのを、月に聞かせてくれました。

それがこのお歌の半分です。


でも、月は知っていました。
落ちたのはまったくの偶然だし、謝ることなんてないことを。
そして、月がボロボロになったのは、落ちたからというよりも、
体重が重すぎて、自分の重みが自分を押し潰したのだということも。

なので、月は、そのことを伝えようと、なんとか言葉を並べてみたところ、
妖怪は、その言葉と出来上がりかけていたお歌を紡ぎなおして
一つのお歌にしてくれました。

それがこのお歌です。

そして、出来上がったこのお歌を聞いて、月の重量化はまた進むのでした。


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因幡さんが作られたお歌にはそれぞれ、
いろんな思い、伝えたい何か、出来上がった背景、理由、何かがある。

ぜひ知ってほしいお歌については、お部屋のMCで話されたり、
ご自分のブログ、特にメイキングオブシリーズに書かれている。

逆に、それらを、はっきりとおっしゃらないお歌もある。

まず、そのお歌に関連した誰かのプライベートにかかわる場合は
ご本人の了承がないと、決しておっしゃらない。

それと、因幡さんの表現者としてのポリシー。
"お歌は頭で理解するものではなく、心で感じてほしい。"

もちろん、聞かせてもらう側が、それらを知ることで、
そのお歌への理解が、感じ方味わい方が、深まる場合もある。

でも逆に、生みの親の因幡さんご自身から得た情報からの理解が、
そのお歌のイメージを、ひとつに固めてしまう場合もある。

そういうことは避けたいと考えられているお歌に関しては
お歌についてあまり何も語られず、質問されたとしても、あいまいにされる。

なので、このお歌について、因幡さんからメイキングが語られることはないと思う。


私が今まで、このブログで書いている拙い記事は、
公認ストーカーとして得た情報や感想から書かせていただいているものだ。

だが、この記事だけは、語られないメイキングの裏側だと思ってほしい。